聞く×伝える×調整する
他のコラムでも述べたようにビジネスは一人の力で完結することはあり得ません。
仕事の話をもってきてくれる営業部門、お客さんに商品を届ける小売部門や配達部門、その商品を仕入れる調達部門、事業を行うための資金を調達する財務部門、社内の管理業務を一手に引き受ける総務部門などが連携して活動するのが企業です。
まだまだたくさんの部門がありますし、それらの部門の中でも階層別に分かれ、方針を決める経営層と実際の業務に携わる現場そしてその仲立ちをする中間管理職と、本当に多くの仕事をする人たちの協働で成り立っているわけです。
ですから必ず自分以外の人の力を借りなければ成果を出すことはできません。
新人の場合は権限も限られていますから先輩や上司を動かして大きな仕事をやりぬくという場合もあるでしょう。
そして自分と自分以外の人や部門の力を合わせて仕事を成し遂げようとする場合、必ずビジネスコミュニケーションの場面が発生します。
さて、コミュニケーションと言ってもさまざまな場面があります。他のコラムで何度も出てきたような報告・連絡・相談や、利害がぶつかる相手との交渉、お客さんへの提案などもコミュニケーションの一種とも言えます。
でも結局どのような場面でも聞く×伝える×調整するの3つの基本的な要素で構成されていると考えてよいでしょう。
①聞く
相手の言おうとしていることに耳を傾けて聞き取ることです。
聴くという文字を使う場合もあります。
ここで大切なことは同じ言葉であっても人によってその意味は異なるということです。
例えばAさんが「果物を毎日摂るのは健康的な食生活と言えますね。」というときに、毎朝果物を絞ったジュースを飲む生活をイメージしているとします。
ところがそれを聞いたBさんは「朝昼晩と、バナナやりんごなどの果物をたくさんいれたサラダを食べること」をイメージしているなんということがあります。
「クルマのある生活」という言葉でも人によってはレジャーで高級車を乗り回すことをイメージする人もいればスーパーマーケットで買い物をするために軽自動車が欠かせない生活を思い浮かべる人もいるでしょう。
ですから聞き手の方は必ずしも自分の感じ方を同じではないことを踏まえた上で話し手に対して「このようなことか」などの質問をすることが大切です。
また聞くときの基本的な態度は傾聴です。相手の言うことに耳を傾ける意識をもつと自然とうなづきやあいづちが出ますので相手の発言を促すことになります。
②伝える
自分の意見を伝えるときはこれと反対のことが起こります。
相手は必ずしもあなたの伝えようとしていることを100%正確に受け止めることはまずないのです。
それを前提とし、なるべく相手がわかりやすいように話すことです。
「わかりやすく話す」とはどのようなことでしょうか。
それは「言葉の選び方と並べ方」です。
相手が理解できない専門用語、自分にしかわからないスラングなどは避け、だれでもすぐにわかる言葉を選びましょう。
そして並べ方のコツは地図帳を参考に考えると効果的です。
地図帳を開くと10万分の1というような広域図があり、2万5千分の1、そして1万分の1という詳細をあらわした市街図が掲載されています。
その地域に行ったことのない人にとってはいきなり1万分の1の市街図を見てもそこがどこだかイメージできません。
いろいろな店舗や学校があることはわかりますが、その店までどのように行けばよいのかわからないでしょう。
コミュニケーションについても同じことが言えます。
あるテーマについて初めて話をする場合、まず10万分の1、場合によっては25万分の1の縮尺の話をするのです。
そうして大枠をつかんでもらった後に詳細な内容を伝えるようにすれば相手が苦労することなく理解することができます。
また、事実と自分の考えをはっきりと区別して伝えることもたいへん重要なことです。
③調整する
相互に受発信をすると考え方の違いが明らかになりますので今度はそれを調整する場面です。
Aという考え方とBという考え方があり、合意点に導く方法はいろいろな方法がありますのでそれらを予め知っておくことは非常に賢いやり方だと思います。
基本的にはA案派とB案派が両方とも満足するウィンウィンの結論に至ることができればもっともよいわけです。
A案ではなくB案になった場合でも力でねじ伏せるのではなく、なぜB案という結論に至ったかという筋道を明確にすれば互いの納得感が得られます。
さまざまな意思決定法というものがありますがこれは別の機会に譲りますが、コミュニケーションは双方向の受発信を繰り返し行い、共通認識に至るステップであると理解しておいてください。